デスクワーク中に肩の張りや首のだるさを感じる人物の後ろ姿。安全なセルフケアについてのブログ用イメージ

久留米市で活動されている作家であり、当院の人財育成をサポートしてくださる松野さんもそうなのですが、長時間のデスクワークで首や肩の張りがなかなか取れないという方は少なくありません。

院長の吉武です。松野さんは執筆やパソコン作業に取り組む時間が長く、忙しい日には1日16時間ほどデスクに向かうこともあるそうです。これまで整骨院などで身体のケアを受けても首や肩の張りが残ることがあり、ご本人もどうしたら楽になるか考えていたと伺いました。

そんなある日、壁に片手を伸ばした姿勢で、たまたま脇の前側に触れたとき、思いがけない強いこわばりを感じたそうです。その後、首を後ろへ動かした際のつらさが軽くなり、肩も動かしやすく感じたとのこと。「セルフケアでここまで変わるのか」と驚いたというお話が、とても印象に残っています。

ただし、ここが大切です。松野さんの体験は、脇の筋肉が首こりの唯一の原因だったという医学的な診断ではありません。まして、脇を骨に当たるほど深く押すケアを、皆さんにおすすめするものでもありません。脇の奥には神経や血管があり、強い刺激は危険です。

この記事では、首や肩を揉んでも張りが戻る理由、脇の前側の筋肉と肩甲骨の関係、デスクワークの合間に安全に取り組める工夫を、医学資料に照らして解説します。

デスクワークの肩の張り・首のだるさが続く3つの理由

1.首や肩だけでなく、腕を前に出し続ける仕事だから

パソコンに向かうと、手はキーボードやマウスの位置で長時間働きます。本人は座っているつもりでも、腕を支える肩や背中、肩甲骨の周りでは筋肉が姿勢を保ち続けています。日本整形外科学会は、肩こりに関わる要因として、首・背中が緊張する作業姿勢、長時間同じ姿勢、運動不足、ストレスなどを挙げています。

ここで重要なのは、首と肩のつらさが、首や肩の筋肉だけで起きるとは限らないということです。腕を前へ伸ばした姿勢を長く続ければ、胸の前側や肩甲骨周辺の動きにも負担がかかります。しかし、どの筋肉が症状に関わるかは人によって異なります。

2.作業中に姿勢を変える時間が少ない

一見よい姿勢で座っていても、同じ姿勢を長時間続ければつらさが出る場合があります。英国の医療機関でも「完璧な姿勢」を一種類に固定するより、姿勢をこまめに変え、仕事の合間に身体を動かすことを勧めています。

たとえば画面を凝視しながらマウスを操作し、休憩中もスマートフォンを眺める生活では、首・肩・腕の動きがほとんど変わらないこともあります。マッサージや施術で一時的に楽になっても、仕事に戻ると同じ負担がかかり、また張りが気になることがあります。

3.目の疲れ・睡眠・ストレスなども重なる

肩こりは姿勢だけで説明できません。仕事での緊張、睡眠不足、目の疲れ、首の病気など、複数の原因が関わることがあります。「肩が張る=猫背が原因」「首がだるい=小胸筋が硬いから」と決めつけてしまうと、ほかの原因を見逃すことがあります。

肩こりの一般的な原因と当院での相談については、首こり・肩こりに関する記事で紹介しています。今回は特に長時間のパソコン作業と脇の前側に注目します。

脇の前側には何がある?小胸筋と肩甲骨の関係

脇の前側から胸の深い場所には、小胸筋(しょうきょうきん)という筋肉があります。小胸筋は胸の肋骨から肩甲骨の前側に向かって付いており、肩甲骨の動きや位置に関わる筋肉のひとつです。また、胸の前側には大胸筋、肩甲骨周辺には前鋸筋など、腕や肩の動きに関わる筋肉が複数あります。

腕を前に出す姿勢が続くと、胸や肩まわりの動きに偏りが生まれる場合があります。松野さんが脇の前に触れたあと首や肩を動かしやすく感じたことにも、姿勢や筋肉の緊張、動かし方の変化などが関係した可能性はあります。

ただし、触った場所が本当に小胸筋だったのか、その筋肉が症状の原因だったのかは、実際に診察や評価をしなければ分かりません。首の運動で楽になったとしても、それだけで神経の圧迫が解消されたと判断することはできません。

医学文献には、小胸筋の下で神経や血管が圧迫される「小胸筋症候群」という状態の報告がありますが、これは特別な診断が必要な病態です。デスクワークで肩が張る人すべてに起こっているわけではありません。腕のしびれや筋力低下を伴う場合は、腕のしびれに関する記事も参考にし、まず医療機関へご相談ください。

「脇の下をぐりぐり押せばいい」は危険

明るいオフィスで壁に片手を当て、胸の前をやさしく伸ばす男性の後ろ姿。脇の下を深く押さない安全な動作のイメージ

脇の下は筋肉だけの場所ではありません。脇の奥には、腕へ向かう神経の束である腕神経叢、太い動脈や静脈、リンパ節などが通っています。Cleveland Clinicの解剖学の案内でも、これらの構造が脇にあることが説明されています。

そのため、脇の奥に指を深く押し込む、骨に届くまで圧迫する、強い痛みを我慢して揉み続ける、といった方法はおすすめできません。「痛気持ちいい」と感じても安全とは限らず、しびれ・電気が走る感覚・腕の冷え・色の変化が出たらすぐに中止してください。

また、「ぐりぐり揉めば神経が解放される」「リンパにたまった老廃物が流れるから首こりが治る」といった説明は、今回の体験だけで証明されるものではありません。医学的に不安がある方は、脇の深部をセルフマッサージするより、負担の少ない動作や作業環境の見直しから始める方が安全です。

脇にしこりや腫れがある場合、皮膚に炎症がある場合、乳房や腕に異常を感じる場合も、強く揉まず医療機関へ相談してください。

安全に始めやすいデスクワーク中のセルフケア

松野さんの体験から学べるのは「もっと強く揉むこと」ではなく、首や肩だけでなく、腕や胸の前側の動き、日々の作業環境も確かめるという視点です。以下は、痛みやしびれのない方が無理のない範囲で試せる一般的な工夫です。

① 手をキーボードから離して、肩をゆっくり動かす

短い休止時間に両腕を脱力し、肩を小さく上下させたり、肩甲骨を意識してゆっくり腕を回したりします。腕や首を勢いよく振り回す必要はありません。肩や腕に痛みが出ない動きだけで十分です。

② 胸の前を無理なく伸ばす

壁に手や前腕を軽く添え、痛くない範囲で胸の前側が少し伸びる姿勢を取ってみる方法があります。腕を高く上げすぎず、肩の位置を無理に引き下げたり、脇の奥を押し込んだりしないでください。違和感が強ければ行わず、症状に合う運動を専門職に確認しましょう。

③ 画面・キーボード・マウスの位置を見直す

画面が遠いと首を前に出しやすくなり、マウスが身体から遠いと腕を伸ばした姿勢が続きます。背もたれ、椅子の高さ、足が床につくか、肘を楽に置けるかを確認します。施術を受けることと、毎日何時間も使う机や椅子を調整することは、別々ではなく一緒に考えたい対策です。

1日16時間のパソコン作業は
セルフケアだけで補える?

松野さんは忙しい日には約16時間もデスクワークをされると伺っています。ただ、長い時間働ける方でも、首や肩への負担が小さいわけではありません。数分のセルフケアで楽になったとしても、16時間座り続ける生活が健康に問題ないと証明されたわけではありません。

厚生労働省の「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」は、連続した情報機器作業を1時間以内の目安とし、次の連続作業の前に10~15分の作業休止時間を設け、作業中にも1~2回程度の短い小休止を取るよう案内しています。

これは仕事の状況や職場の管理方法も踏まえた指針ですが、長く働くほど休止や作業変更の重要性が増すということです。パソコン作業を中断して立つ、別の作業をする、遠くを見る、少し歩くといった動きを仕事の予定に組み込んでみてください。

2024年に公表されたデスクワーカーの慢性的な首の痛みについての研究レビューでは、首・肩・肩甲骨周辺の筋力トレーニングが痛みや生活上の支障を軽減する可能性が示されました。ただし研究の確実性は低く、すべての方に同じ効果が出ると断定はできません。仕事環境の工夫や医療的な評価も合わせて考えることが大切です。

足裏をテニスボールで転がすケアは首にも効く?

松野さんは脇の前側だけでなく、座っている間にテニスボールで足裏を軽く転がすことも取り入れているそうです。長時間座る仕事の合間に足を動かすきっかけになり、足裏のこわばりを感じている方には心地よい場合があります。

足の裏をボールで転がす方法は、足底の痛みなどのケアとして海外の医療機関でも紹介されています。一方で、足裏と首が一本の筋膜でつながっているから首や肩こりまで根本的に治る、という主張には十分な根拠がありません。足裏のケアは、足の負担を見直す一つの方法として考えましょう。

試す場合は安定した椅子に座り、靴下などを着用して足裏に軽く当て、強く踏み込まないようにします。痛みやしびれが出たら中止してください。足の感覚が鈍い方、糖尿病で足のトラブルがある方、血流に問題がある方は、自己判断で行わず医療機関に相談してください。

首・肩の張りが改善しない|受診を優先したい症状

セルフケアや整骨院での相談だけで様子を見続けてよいとは限りません。日本整形外科学会は、肩こりの背景に頚椎の病気や眼の病気などが関わることもあると案内しています。

手や腕のしびれが続く、握力が落ちた、腕が冷たく色が変わる、急に強い痛みが出た、ふらつきや歩きにくさがある場合は、整形外科など医療機関で原因を確認してください。胸の痛みや呼吸の苦しさ、突然の片側の脱力などがある場合は救急の対応が必要です。

また、デスクワークによる張りだと思っていても、夜間も続く強い痛みや、症状が長期間改善しない場合には医師へ相談しましょう。深い脇のマッサージで神経の圧迫を自己治療しようとすることは避けてください。

むさし久留米院では首・肩だけでなく仕事中の動きも伺います

当院では、首や肩の張りについてご相談いただくとき、今の症状だけでなく、デスクワークの時間、マウスの位置、腕を前に出す時間、休憩の取り方なども伺い、柔道整復師が対応できる範囲をご説明します。

骨盤矯正・ハイボルト・ソフト鍼灸で楽になっても、セルフケアは大切です

当院では、首や肩の状態だけでなく、姿勢や身体の動きも確認し、一人ひとりの症状に応じて骨盤矯正・ハイボルト・ソフト鍼灸などをご提案する場合があります。こうした施術は痛みや張りなどの不調をやわらげるための選択肢ですが、施術で楽になったことと、仕事や生活の中で身体にかかる負担が減ったことは別です。長時間パソコンに向かう生活が変わらなければ、再び首や肩のつらさを感じることもあります。

だからこそ、むさし久留米院では「施術を受けて終わり」ではなく、その後のセルフケアも大切にしています。例えば、仕事の合間に立ち上がる、肩や腕を痛みのない範囲でゆっくり動かす、机・椅子・マウスの位置を見直すなど、毎日の小さな工夫です。整骨院で身体をケアしながら、普段の生活で負担をため込まないことを一緒に考えていきましょう。セルフケアの方法は身体の状態によって異なるため、痛みやしびれを我慢して続ける必要はありません。

松野さんのように「首や肩をケアしているのになかなか楽にならない」という方には、身体の一部分だけでなく、仕事や日常生活全体を見直すことが役立つ場合があります。ただし、当院で小胸筋が原因と断定したり、脇を押せば治ると保証したりするものではありません。必要に応じて医療機関での診察を優先します。

慢性的な肩こりや疲労を目的とする施術は、柔道整復の健康保険が適用されるとは限らず、自費のご案内になる場合があります。料金や施術内容は事前に確認してください。整骨院の保険と自費の違いも参考になります。

むさし鍼灸整骨院 久留米院のご相談・施術案内をご覧いただき、現在の症状やご希望をお伝えください。首・肩の張りを我慢しながら仕事を続ける方に、無理のない対応を一緒に考えたいと思います。

よくある質問

脇の下をほぐすと首の動きが軽くなるのは本当ですか?

松野さんのように、脇の前側に触れたあと首や肩が楽に感じられる人はいます。ただし、小胸筋が原因だった、神経の圧迫が取れた、と確定できるわけではありません。深く押すことは避け、痛みやしびれがあれば中止してください。

脇の前側が硬いのは小胸筋が原因ですか?

小胸筋が肩甲骨の動きに関わることは事実ですが、触っただけで筋肉や神経の状態を特定することはできません。ほかの筋肉や頚椎・肩関節の問題も考えられます。

肩こりを揉んでもすぐ戻るのは施術が足りないからですか?

施術回数だけの問題とは限りません。仕事中に同じ姿勢を続ける時間、睡眠やストレス、身体の状態などが重なる場合があります。症状の変化を振り返り、必要なら医師にも相談しましょう。

足裏のテニスボールで首こりまで治りますか?

足裏のケアとして行われる方法ですが、首こりが根本から治ると示す十分な根拠はありません。心地よさを感じても、首や肩のつらさに対する治療とは区別して考えてください。

まとめ|首だけを揉むのではなく、働き方と身体の動きを見直す

デスクワークの首のだるさ・肩の張りが長引くときは、首や肩だけを原因と決めつけないことが大切です。胸の前側の筋肉や肩甲骨の動き、長時間の作業姿勢、休憩不足など、複数の要因が関わる場合があります。

松野さんの体験は、自分の身体の変化に気づくことの大切さを教えてくれます。同時に、脇の奥を強く押すケアが安全・確実に効くことを意味しません。まずは無理のない肩の動きと作業休止、机と椅子の見直しから。症状が続く場合は適切な専門職へ相談する。この順番を意識していただければと思います。

参考にした情報

院長・吉武宏記のご紹介

身体の悩みに、一人ひとりに合う施術で向き合います。

むさし鍼灸整骨院久留米院 院長 吉武宏記
院長 吉武 宏記
国家資格 柔道整復師業界13年院長歴8年

株式会社FANFarePlus 代表取締役/むさし鍼灸整骨院 久留米院 院長

姿勢矯正、骨盤・猫背の独自整体、交通事故後のむち打ちへの対応、産後の骨盤ケアなどを得意としています。

患者さま一人ひとりの症状や生活に合わせて、むさし独自の施術を組み合わせるオーダーメイドのケアを大切にしています。再発しにくい身体づくりを目指し、日常生活での負担についても一緒に考えます。

趣味:テニス・グルメ・旅行